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Fe-poor組成Mn-Zn-Tiフェライト磁心を用いたコモンモードチョークコイル

 電子機器の高周波化に伴ない、1MHzを超える高周波帯域での使用にも耐えうるMn-Znフェライトの開発が望まれている。従来、Mn-ZnフェライトはNi-Znフェライトと比較して比抵抗が低く、渦電流の発生により1MHz以上の高周波数帯域での使用には適さなかった。筆者らはNi-Znフェライトと同様にFe2O3組成が50mol %より少ないFe-poor組成Mn-Znフェライトの検討を行い、TiO2を添加して大気中焼成することにより高周波数帯域において高い初透磁率が得られることを報告している1)。また、窒素中で焼成することにより、良好な高周波特性をほぼ保ちながら低周波において高透磁率が得られることを報告している2)。そこで本研究では、このフェライトコアの応用としてコモンモードチョークコイル(以下、コモンチョーク)と、さらに、コンデンサと組み合わせたLCフィルターとして評価した。
工業用原料のFe2O3、Mn3O4、ZnO、TiO2原料から、通常の粉末冶金法により粉体を作製した。焼き上がりで外形:25、内径:15、高さ:13[mm]のトロイダル形状になるよう成形した。窒素を流入して酸素分圧を制御した雰囲気中、1350℃で3時間焼成し、コアを得た。そして、初透磁率:μiをインピーダンスアナライザ(HP4294A)を用いて測定した結果をFig.1に示す。Fe2O3組成が50mol%よりも多い従来のFe-rich組成のMn-Znフェライト(当社SE50C材、μi(=5,000 at 0.1MHz)は1MHz付近において急激に低下したのに対し、Fe-poorフェライトは高周波数帯域へ伸びている。これは、コアの比抵抗が高いことによる。一般に、4,000以上のμiを有するものはhigh-μ材と呼ばれている。著者らは、この材料をhigh-μ/high-f材と呼ぶこととした(注、ここでfはfrequencyの略)。
これらのコアにボビンを介して0.8[mm]の銅線を16ターン×2巻き、コモンチョークとした。そして、コモンモードインピーダンス:|Z|を同じくインピーダンスアナライザを用いて測定した結果をFig.2に示す。低周波においてはFe-richフェライトがわずかに上回った。しかし1MHz付近にて逆転し、これより高周波帯域においてFe-poorフェライトは優れた特性を示した。3,300 [pF]のYコンデンサ2個とLC回路を組み、挿入損失を評価した結果においてもこの優位性は維持された。数100kHz〜1MHzといった高周波駆動のスイッチング電源の場合、その高調波ノイズは数MHz〜数十MHz付近にくるので、Fe-poorフェライトの特徴が活かされる。この他、コンデンサを使用出来ない信号ライン用途としても有望である。


参考文献
1) 小林、山田 : 日本応用磁気学会誌 24, 715 (2000)
2) 山田、小林、伊藤、冨田 : 日本応用磁気学会誌 25, 947 (2001)
グラフ

  日本応用磁気学会誌、26, p689-692、(2002)
  著者 : 小林 修、伊藤 清、冨田 充
  著作権者 : (社)日本応用磁気学会